【書評・ポイント】「脳の闇」②不安を感じやすい方へ

新書

『脳の闇』中野信子

今回は中野信子さんの「脳の闇」についての続きですが、改めて脳の仕組みを学んでいくと不思議だなあとしみじみ感じます。

どうして、なんのためにという機能?仕組み?もありますよね。きっと昔はそう感じることが重要であったんでしょうが…

前回主として書いた「承認欲求」なんて、無い方が楽なのになんて思いますしね。それに捕らわれてしまっている人も意外と身近にいたりします。

自分の存在価値を、誰かに認めてもらいたくはならないだろうか。

自分のことをわずかでも誰かに理解してほしいとは思わないだろうか。自分が見たもの・感じたものを、他の誰かと一緒に味わいたくはならないだろうか。

これらの願いをざっくりと、心理学の用語でひとくくりにまとめると、「承認欲求」ということになるだろう。

この拭い去りがたい、ヒトに特異的な欲望と快楽のかたちを、もしかしたら過去の宗教家は「業」と呼んだのかもしれない。

『脳の闇』中野信子

ということで、「承認欲求」について特に興味がある方は前の記事をお読みいただければと思います。

前回「承認欲求」について書いていたとき、「不安」についても興味を持ったので、そこを中心に書いていきます。

人が「不安」に苛まれてしまう理由、本来「不安」を感じることにより、どういうメリットがあったのか、そういったところに興味を持ちました。

特に結論はないかもしれませんが、脳はこういった機能がある、ということを知るだけでも自分の持つ「不安」との向き合い方が変わるのではないでしょうか。

 

今回の記事は、こんな方におすすめ

・心配性の方
・メンタルをコントロールしたい方

概要

本書は第一章~第八章で構成されています。

第一章 承認欲求と不安
第二章 脳は、自由を奪う
第三章 正義中毒
第四章 健康という病
第五章 ポジティブとネガティブとあいだ
第六章 やっかいな「私」
第七章 女であるということ
第八章 言語と時間について

今回の記事の内容としては第一章及び第八章から記載していきたいと思います。

内容について

承認欲求と不安

不安というのは、一般的には良いものとは言われない。むしろ、ネガティブな感覚として捉えられていることが多いだろう。

だが、生物の生存にとっては意味のあるものだ。 予測され得るリスクを回避し、将来的にリスクになり得る要因を検出し、排除するために不安がある。

つまり、 生物は不安という感情をアンテナとして、未来に備えて自身が生き延びる確率を上げるために利用している。不安感情が不快で、ネガティブなものである意味もそこにある。

その方が、リスクの検出感度が高くなるからだろう。

『脳の闇』中野信子

過去、私の部下に2人のまったく違うタイプの方がいました(仮にAさん、Bさんとします)。

Aさんは作業が早く、仕事も丁寧だがメンタル的に弱い方、Bさんは仕事は遅く、仕事も少し雑であるがメンタルは強い方。

補足すると、二人とも仕事に対してはやる気はあります。

その時は、このまったく違う2人について、どうしてこんなに差があるのだろうか?二人を足して2で割ったくらいだとバランスが取れているのにな、と思っていました。

もちろん、人によって差があるのは当然なのですが、その中でもその差が顕著な2人が同時に部下につくという珍しい経験でした。

ただ、本書を読んでいて、そういうことかと腑に落ちたところがありました。

Aさんは、今の仕事に関係のない過去の小さな失敗を思い返してはストレスをため、何かに追われるように仕事をこなしていました。一方でBさんはあまり先のことを考えず楽しそうに作業をしていました。

二人とも割り振られている仕事には、量的にも質的にも大きな差はありません。しかし、当人が感じる不安には大きさな差がありました。

本書には、不安について下記のような記載があります。

人間にはもはや天敵が存在しない。天敵になり得るような生物は、人間自身だけだといえる状態が長らく続いている。

未来を予測したとき、そこに大きな危険を想定することが困難であるとしたら。そのとき、自動的に生理的に生じてしまう不安感情の向かう先は、どこになるのだろうか?

人間たちの脳に備え付けられた不安というアンテナは、大きな、あるいは確実なリスクを検出することができなければ、その感度を上げて、

本来ならリスクにはなり得ないようなことをわざわざ拾い上げてしまうようだ。

『脳の闇』中野信子

これを読んで、おそらくAさんにとって、仕事の内容と不安はあまり関係ないんだろうと考えました。

何の作業であろうと、最終的に責任を負うか否かも関係なく、アンテナの感度が高すぎるがゆえに、どこからでもリスクを拾い上げてしまう。

そういった方もいるのでしょう。それは人が持っている脳の機能であり、本人が意識してやっていることではないのです。

もしかしたら、そのような方は何かしらの分かりやすいリスクがある方が安定するかもしれません。

自分自身でも、周囲の方でも、もっと人を理解できて、認められたらいいですよね。

理解した上で、色んな人にあった生活が選べて、みんなもそれを認める、そんな風にならないかなあ。

ただの感想ではありますが、そう思いました。

言語と時間について

過去の出来事を時間と結び付けて知覚したり、未来のことを考えたりする能力を人間が持っているのはなぜか。

この疑問に対して、社会学、 認知科学的な研究からは、その能力の高い個体が裕福になりやすいからだ、という見解が示されている。

過去から学び、遠い未来を考える力がある人のほうが、生き残るためのリソースを多く得られ、生き延びやすい、ということだ。

しかし一方で、悲観的な未来を詳細に想像する力も高くなる。

『脳の闇』中野信子

先ほどのAさんとBさんの場合では、確かにAさんの方が仕事の成果としては上がっていたかと思います。

確かにその分、将来的には評価され、Bさんと給与の面では差がついていくでしょう。ただ、それは将来への不安を常に感じていたからなのかもしれません。

今はプロジェクトも終わり、AさんとBさんそれぞれと関わる機会はほとんどありませんが、どちらが本人にとってはいいのだろう、と思います。

プロジェクトとしてはとりあえず終わりましたが、マネージャーとしては、仕事を終えるだけで十分だったのかはわかりません。

ネガティブな未来からのリアルな脅迫を感じながら、一瞬一瞬を、人生の終わりまで過ごさなければならない、これはかなりの苦痛だろう。

もう手の届かない過去のことをわざわざ思い出して現在に活かす教訓にしようと試みたり、まだ何も決まっていない未来のことをあれこれ予測して戦略を考えるというのは、

時間軸を自由に移動するようなもので、その自由によって選択肢の幅も大きくなり、心理的な負荷も高くなる。

もちろん脳も、現在のことしか見ない場合よりも、ずっと多くのエネルギーを使うことになる。

『脳の闇』中野信子

本書を読んでいて、人は過去から学んで、将来に活かすことは確かに大事。ただ、人によってはそれにより、不安を感じて、日々不安に苛まれているかもしれません。

そう思うと、別に日々楽しく過ごすことを優先していいのかもしれない、そう思いました。

全員が全員そんなちゃんとする必要もないし、何を望むか、何がその人にとっていいのかはわかりません。

価値観を押し付ける必要はないし、押し付けられとしても別に聞く必要もないんでしょうね。

あとは脳の機能的に仕方ない、そう理解している人が増えたら、色んな人がもっと楽に、楽しく過ごせるんですかね?

というところで、ただの感想を書いただけでになってしまいましたが、今回はこの辺りにしておきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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