「 韓非子 人を動かす原理」韓非(前田信弘 編訳)
今回は「今こそ名著 韓非子 人を動かす原理」です。
孫子や論語ほど有名ではないかもしれませんが、中国法家の思想として、非常に面白く、人間の本質をついているものだと思います。
読んでいくと、現代でも役立つ内容であることがわかります。組織で働く方であれば読んでおいて損はありません。
というのも結局、現代においても一番の悩みは人間関係ではないですしょうか?
その点は、古代中国だろうと、現代の日本だろうと違いはありません。なので、読み継がれてきた本書は、その悩みに役立つことは間違いないのです。
また、韓非は下記のように、人間不信、性悪説の立場の人物なので、単純に嫌なやつが書いたものに思えるかもしれませんが、私は韓非のことを嫌なやつだとは思いません。
さらにこうも論じていてる。
「君主にとって害となるのは、人を信じることである。人を信じればその人に制せられることになるのである」
人を信用してはならない。まさに人間不信の哲学である。
だからといって人間を否定しているわけではない。あくまで人間というものを冷静に見つめ、あるがままの現実をとらえているのである。そして、そうしたところに韓非の冷たく非情な人間観をみることができ、その 思想が『韓非子』 全篇に貫かれているのである。
「韓非子」韓非
むしろ偏見や感情にとらわれず、皆を平等に扱うという点では、差別をしない「いい奴」なのではないかと思います。
ということで、4月ですし、そんな韓非子から一部を取り上げて、新たな場所でチャレンジする方向けに記事を書いてみたいと思います。
今回の記事は、こんな方におすすめ
・転職する、転職したばかりの方
・新たな場でチャレンジする方
概要
本書は「韓非子」の現代語訳です。五十五篇ある中から一部が抜粋され、第2部に収録されています。
第1部で韓非という人物について紹介されているので、その背景を知った上で第2部を読むことができます。
そして第3部でそこから考察がされる流れになっているので、短くはない量ですが、比較的読みやすいですね。
第1部 『韓非子』とは
第2部 現代語訳『韓非子』
第3部 『韓非子』をいまに
今回は、第2部の第一章「対人ー人間関係の機微」から見てみたいと思います。
相手の受け止め方次第
まず、新たな場でチャレンジする方にお伝えしたいのは、自分の立場を理解し、何よりもまず信頼関係を築くことが重要であるということです。
自分の意見をはっきり言うとか、議論で力を見せつけるとかそういったことではありません。
なぜなら、同じ内容の発言でも、どの立場の人は誰が言うかで受け止め方はまったく違うからです。
韓非子では、「塀を修理しないと泥棒が入る」といった発言を例にしています。
宋の国に金持ちがいた。ある日、雨で塀がこわれ、その家の息子がこういった。
「塀を修理しないと、泥棒に入られるよ」
隣の家の主人も同じことをいってきた。
その晩、はたして泥棒に入られて、金持ちは大金を盗まれてしまった。金持ちは、自分の息子の賢さに感心した。
そして息子と同じことをいった隣の家の主人 が犯人ではないかと疑った。
「韓非子」韓非
これは同じ発言でも息子という信頼関係のある者は賢いと捉えられ、関係性の薄い隣人は疑われるということですが、
要は新たな場に飛び込んだ方はこの「隣人」と同じです。
例え、正しい意見を言ったとしても、初めて会ったような信頼関係のない(仲間と認められてない人)の発言はよく思われない可能性が高いです。
また、実際に私の身近であった話を書いてみます。
新入社員「この作業の目的は何ですか?そして誰を対象として行っているんですか?」
入社後の最初の会議で、新入社員は質問をしました。
仕事には目的があり、それを細分化していったものが作業であるはずなので、大前提としてそれを確認した行為自体は間違っていないはずです。
しかし、これを失礼だ、生意気だと感じた先輩がいました。
先輩からすると「なんでそんなことやってんの?」そう言って馬鹿にされているように感じられたのかもしれません。
とくに、長くその仕事を担当されている方に上記のような質問をするとプライドを傷つけられたように感じる可能性が高いと思います。
つまり信頼関係のない中で、この質問をするのも相手がフラットに意見を判断できる人でなければ、悪手となり得ます。
また、その人が人の意見をフラットに聞き入れる方か、そうでないか、いきなり判断できるかというとそれも難しいですよね。
なので、最初は相手の意見に沿った形の中で自分の意見を言う等、信頼関係を築く行動を中心とすることが望ましいのです。
相手の意見を反することは、自尊心を傷つけ、反感を買うことになるかもしれませんので、意見をする際にはに気をつけましょう。
あとは行動経済学でいう「単純接触効果(繰り返し会うと好感をもつ)」を活用し、当たり前ですが、毎日挨拶をすることで信頼関係を築いていくといいですね。
一度嫌われてしまうと、嫌なところばかり目についてしまうので取り返すのは大変です。
この後、この新入社員と先輩が信頼関係を築くには、周りの配慮も必要となり、コストもかかってしまったそうです。
ここで、最後にもう一度韓非子の内容を振り返っておきます。
「塀を修理しないと泥棒が入る」息子と隣家の主人は同じことをいったが、 息子は賢いと思われ、隣家の主人は泥棒ではないかと疑われた。ここに発言や忠告の難しさをみることができる。
つまり、同じ発言や忠告をしても、立場や状況によって相手の受けとめかたは異なるということである。発言や忠告は、自分の置かれた立場や状況を十分に考慮したうえで行わなければならない。
そうしなければ、いくら正しいことをいっ ても聞き入れてもらえないかもしれない。いや、それどころか自分の身を危うくすることになるかもしれないからだ
はい、まず自分の立場をしっかり確保した上で、発言していきましょう。。
というところで、まとまっていませんが、最後までお読みいただきありがとうございました!
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