今回の記事「ビジネスデザインのための行動経済学ノート」中島亮太郎
今回は、これまでとは少し異なる本を紹介します。まず、読者の皆さまは「行動経済学」をご存知でしょうか?
行動経済学とは、簡単に言うと人の持つ直感や感情等の心理的要素を取り入れた経済学です。
したがって、普通の経済学では人は合理的な行動をとることを前提にしていますが、行動経済学では必ずしも合理的な行動をとるわけではない、と想定しています。
私は大学時代にはじめて行動経済学を知り、これはなにより面白い学問だと思い、ゼミに入りました。しかし、気付くと公認会計士試験に追われ、深く学ぶことができませんでした。
そして、社会人になってからは、なかなか思い出すこともありませんでしたが、ある日たまたま本書に出会いました。
そこで本書の表紙に惹かれ、久しぶりに行動経済学にも触れたいと思い手にとった1冊でした。
本書はタイトル通り、行動経済学をビジネスに活かすための本であり、作者である中島亮太郎さんはデザイナーであることから、見た目もきれいに仕上げられています。
そのため、これまでに非常に分かりやすく、行動経済学を学んだことのない人が最初に手に取る本としては、おすすめできる1冊かなと思いました。
今回の記事は、こんな方におすすめ
・組織を動かす立場にいる方
・新しい商品や事業を生み出したい方
概要
本書の内容は、3つの章で構成されています。
1章.フレーム
2章.バイアス
3章.ナッジ
まず、1章のフレームで行動経済学の考え方についての全体像が説明されています。
第2章バイアスで、人が情報をインプット(判断)するときには、何がどのように影響するのかが説明され、
第3章ナッジで、人がアウトプット(行動)するときには、何がどのように影響するのかが説明されています。
構成としても、非常に分かりやすくなっているので、順番に読んでいけばどなたでも簡単に、行動経済学のイメージをつかめるかと思います。
内容について
「認知の流れ」について
まず、概要でも記載しましたが、認知の流れとしては下記のイメージとなっています。人が情報をインプットし、判断する際には「バイアス」があり、行動するまでには「ナッジ」があります。
情報と判断の間には「バイアス」が存在します。人は機械とは違っていろいろな情報に影響を受けるし、その人の考え方のクセもあります。 ここには多くの行動経済学の理論が関係しています。
「ビジネスデザインのための行動経済学ノート」中島亮太郎 P25
そして、もう1つの判断と行動の間では、 ユーザーに意図的なはたらきかけを行うことができます。 条件や選択肢などを提供することによって、 ユーザーの行動を変えるための後押しができるようになります。ここには「ナッジ」という行動経済学の考え方が当てはまります。
この「バイアス」と「ナッジ」について、多くの種類があり、本書の中では、イラストによる図解と例示が紹介されています。その内容について、下記で記載していきます。
「ピア効果(一緒だとがんばれる)」について
ナッジの一つであるピア効果は私は組織を動かす上では、非常に重要であり、ほぼ確実に使用しています。本書の中では、下記のように要約されています。
●相手の適度なプレッシャーがあるとパフォーマンスが上がる
「ビジネスデザインのための行動経済学ノート」中島亮太郎 P35
●競う相手とは程よい力量でフラットな関係であること
●競いつつも意識は相手ではなく自身に向けること
これは、100m走や水泳等のスポーツだけでなく、職場における同僚でも同じであると本書の中で述べられています。
よって、私は何か組織で施策を行う際には、同様の立場の人は並べて、互いの状況を見えるように設計しています。
簡単な例えですが、チャットツールの同じグループに追加したり、進捗状況をリスト化して公開したりといったことが当てはまりますね。
そうすることで、無意識的に適度なプレッシャーを感じ、それぞれがより力を発揮できるようになると考えています。
これは私も同様で、同じ立場のマネージャーの動きが見える方がお互いに成長し、より頑張れる気がしています。
「傍観者問題」について
ナッジの一つである傍観者問題は非常に大きく、これも意識して、行っている事の一つです。特に誰かに対し、指示やお願いをする際には傍観者問題が発生しないように留意しています。
本書の中では、下記のように要約されています。
●集団の中では、人は自主的な行動を取らずに他人に頼る
「ビジネスデザインのための行動経済学ノート」中島亮太郎 P71
●相手の顔が見えていると気づかい 、見えていないと自分勝手になる
●物理的・心理的距離感によって社会的な関係性は変わる
これは本書の中では、トリプルチェックがダブルチェックより、品質が落ちてします可能性があるということで例示があげられており、その原因としては責任感の希薄化によるものと考えられています。
私は、とある部署やチーム(複数人)にお願いする場合であっても、代表一人を名指ししています。これによって、集団から1対1の関係に持っていくことができるからです。
そうしなければ、誰かがやるだろうということで、対応してもらえない場合も多くなってしまうからです。
(名指しせず、無視されてしまったケースは多々あります…)
結果として、名指しした方がご対応されないとなったとしても、適した誰かを推薦してくださるので、誰も反応しないという可能性はほとんどないと思います。
ただ、名指しした方と自分自身が、日頃から一定の信頼関係を築いていなければ、急に名指された方が不快に思う可能性も十分にありますので、そこは注意してくださいね。
「DIY効果(自分が関わると過大評価)」について
これはIKEA効果とも呼ばれており、様々なところで活用されているので、無意識のうちに用いている方も多いと思います。
IKEAはスウェーデンの家具販売会社ですが、その販売されている家具には手作りの要素を残しているという特徴があります。
そして手作りの家具のように、人は自分が手を加えたものに対しては、それを高い価値があると判断(過大評価)してしまう傾向があります。
●人は何かしら手を加えたくなる
「ビジネスデザインのための行動経済学ノート」中島亮太郎 P102
●最後にちょっと手を加えるだけでも愛着は生まれる
●市場の効率性が成熟すると、むしろ手間を求めるようになる
このDIY効果で面白いところは、上記にもあるように最後にちょっと手を加えるだけでいい、というところです。
例えば、敵対している人がいるのであれば、その方に少しでもいいので意見を聞き、取り入れてあげると、味方になってもらえるかもしれません。
よって、私は新たな取り組みや商品を作る際には、積極的に意見を求めることを心掛けています。
例え自分の中で元々考えがあったとしても、意見を聞いたおかげでできたという形で見せてあげるのです。
そうすると、やはり意見をくれた方は自分の手が加わったと思い、味方になってくれるケースが多い感じますね。
以上、今回はバイアスについて3つ私自身が心掛けて取り組んでいることをご紹介させていただきました。
しかし、いずれも気を付けなければいけないのは、こういった心理的効果を悪用してはならない、ということです。
私は自分の利益ではなく、会社として、皆にとって、何が最適かを優先に考えて行動しています。
(管理職の方であれば当然のことだとは思いますが)
しかしながら、長期的に見れば、全社や皆のためになることでも、一個人ベースでは、短期的なの損失になってしまうこともあります。
なので、そういった際には、最後のDIY効果等も用いて、味方になってもらうことも考えなければならない、ということになりますね。
まだまだ紹介出来ていないところもありますが、今回は以上とさせていただきます。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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