【書評・ポイント】「脳の闇」①「人」に興味を持った方へ

新書

『脳の闇』中野信子

今回は脳科学である中野信子さんの「脳の闇」という本ですが、本書は仕事に役立つことを目的として本(いわゆるビジネス書)ではありません。

中野さんの自身の経験と脳科学知見を活かした、「人間論」だと思います。

仕事や家庭、どの場面においてもコミュニケーションは基本ではありますが、

そもそもの人間の思考は、どういった脳の機能によるものなのか、少し興味を持っていました。

そんな時、たまたま本書に出会いました。下記は、本書の「はじめに」で書かれていることの一部ですが、人の持つ「承認欲求」について、非常に興味を持ちました。

多くの人が私に求めるものは、科学を語ることではないようだ。

確かに脳科学そのも のについては、学者がわざわざ語らなくとも、ネット環境さえ整っていれば、誰でも論文や書籍を手に入れることが容易にできるのである。

研究データについてはけっこうな部分まで自分で調べることが十分できてしまう時代である。

本当に知りたい、聞きたいと思っているのは、自分自身のこと以外ではあり得ないのだろう。

自分自身のことをもっと知りたい、理解したい、受け止めたい、受け止めてほしい・・・・・そんな願いに、本人こそが縛られて苦しんでいるのかもしれない。

『脳の闇』中野信子

というのも、たまたま「頭のいい人が話す前に考えていること」の記事を書いている中で、

コミュニケーションにおいては承認欲求をどうコントロールするかが非常に大切であり、承認欲求を満たす側に回れとメッセージが印象に残っていたからです。

自分自身の承認欲求は抑制し、他社の承認欲求を満たすことができれば、「コミュニケーションの強者」になることが可能だということです。

『頭のいい人が話す前に考えていること』安達裕哉

なので、おそらくは中野さんが本当に伝えたいこと、というよりはその過程の中でできた情報を切り取って、自分に役立てるというようなものが今回の内容になると思います。

 

今回の記事は、こんな方におすすめ

・「承認欲求」をコントロールしたい方
・人の行動の原因に興味のある方

概要

本書は第一章~第八章で構成されています。

第一章 承認欲求と不安
第二章 脳は、自由を奪う
第三章 正義中毒
第四章 健康という病
第五章 ポジティブとネガティブとあいだ
第六章 やっかいな「私」
第七章 女であるということ
第八章 言語と時間について

今回の記事の内容としては前半から記載していきたいと思います。

後半の方が人間味があって面白いのかもしれませんが、まずは一般的に役立つことが多そうなところで、書いていきます。

内容について

承認欲求と不安

過去、私の同僚に異常に「承認欲求」が強い方がいました。その人は常に何かに追われるように仕事をしていました。

しかし、そのあまりに強い「承認欲求」から、仕事を抱え込み、周囲へあからさまにアピールし続け、周りの人たちから疎まれていました。

承認欲求とはやっかいなものだ。受け止めてほしい、特別な存在であることを認めてほしい、という欲求。

その欲求自体は自然なものであるはずなのだが、これをあまりにあからさまに大勢の人の前で表現しすぎる人はなぜか、一般的にあまり歓迎されない。

『脳の闇』中野信子

結局、彼は抱えこんだ仕事をこなすことができず、ご体調を崩し、退職されてしまいました。要は彼は自分自身を制御できなかったのです。

ただ、これは誰でもそうなのです。本書の中でも、承認への欲求をこれほど強固に持っている生物は、他にいないと書かれています。

これは昨今のSNSを見ればよくわかりますね。承認欲求を満たしたいばかりに嘘をつく方が度々話題になっています。

一方でこれを逆の立場で考えると、周囲の方の承認欲求を満たしてあげる方が好かれるんだろなと考えましたが、本書にも下記の一文がありました。

どんな世界のどんな人であっても、人間は自分に興味を持ち、自分の言葉を聞いてくれる人に好意を持つものだ。

『頭のいい人が話す前に考えていること』安達裕哉

この脳の性質をを理解して、自分の承認欲求はコントロールしていきたいですね。

逆にどんな相手もこの仕組みがあるのだから、仕方ないと思い、承認してあげましょう。

(まあ、言うのは簡単ですが、これがなかなか難しい…)

 

タイムプレッシャーによる意思決定

これは第二章の「脳は自由を嫌う」のはじめの部分です。それにしても、「脳は自由を嫌う」とは、最初はどういうことなんだ??と思いました。

今まで、そういった発想をあまりしたことがなく、自分の中ではピンとこなかったからです。しかし、この章を読むことで「脳は自由を嫌う」ということがしっくりきました。

(ここでは記事の都合により詳細割愛しますので、本書をお読みください!)

というところで、「タイムプレッシャーによる意思決定」に話を戻します。

例えとして挙げられているのが、ECの店舗サイトで「残り9枚です」「これを見ている人が○○人います」といったプレッシャーにより、思わず「購入する」をクリックしてしまう、ということです。

これは下記のような研究成果で明らかになっているようです。

① 直感で物事を判断するとき
② じっくりと時間をかけて意思決定するとき

①と②のプロセスはスピードが違うだけで、基本的な機能や構造は同一であると考えられてきた。

しかしアメリカのヴァンダービルト大学の研究によれば、これらの脳内におけるプロセスは全く違うという。

①の直感を働かせて判断しているときには、②のじっくり時間をかけて意思決定するときに使われる、論理的な機構が機能していないことが示唆されたのだ

『脳の闇』中野信子

ほかにも「限定品」についても「後で買えないかも」という不安によって冷静に計算する機能を低下させているようです。

思い返せば、私もこういった意思決定をしている場面は多いような気がします。マーケティングではこういった脳の働きがうまく使用されていますね。

ただ、一方でこれはものを購入の時だけの話だけでなく、人は誰でも、常に正しく判断をしているわけではないということです。

本書では下記のように記載されています。

私たちは、純粋にそのものの価値を測って、それだけに基づいて購買の意思決定をしているわけではないのである。ものの価値どころか、自分自身の価値ですら測れない。

これは人間の業である。が、その一方で、自分の価値が不確定であるというのは福音であるのかもしれないのではあるが。

『脳の闇』中野信子

人はまわりの状況によって、脳の働きは低下する、価値もその時々で変わる、これ改めてこれを自覚しておくことが必要ですね。

そうすることで自分の意思決定にも役立つでしょうし、自分の心も安定するかもしれません。

もし人が、常に絶対で普遍的な価値判断が可能だとしたら、それはそれでしんどいだろなあと想像します。

というところで、本書から少し無理やり仕事に役立つところを切り取ってみました。

しかし、本書で中野さんがお伝えしたいと思われる人の「業」、脳の機能の「闇」についてはあまり触れていませんので、興味がある方ぜひ本書自体をお読みいただければと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました!

コメント

タイトルとURLをコピーしました