今回の記事「上流階級 富久丸百貨店外商部(其の一)」高殿円
今回の記事は、「上流階級 富久丸百貨店外商部(其の一)」です。
本書はドラマ化もしているので、知っている方も多いかと思いますが、お恥ずかしながら、私はつい最近たまたま知りました。内容としては、百貨店の外商に関するお仕事の小説です。
ただ、今回ご紹介したいのは、本書はただ面白いだけではなく、仕事(特に営業職やサービス業)にも役に立つものだと感じたからです。
金持ちは少ない。
「上流階級 富久丸百貨店外商部」 p27(文庫版)
(だけど、いる)
そのわずか一割の富裕層相手に、百貨店の年商の約三割を叩きだす。
それが静緒たち究極の営業――百貨店の外商なのだ。
また、組織の体制についても私は勉強になることがあると感じましたので、組織を考える管理層の方にもおすすめできます。
こんな方におすすめ
- サービス業で働く方や営業職の方
- 仕事が楽しい女性の方
概要
「上流階級 富久丸百貨店外商部」は、現在(2023年1月)、シリーズで4冊が出版されていますね。
本書はその中の第1巻で、主人公の「鮫島静緒」が突然の人事異動で外商部に配属されたところから物語が始まります。
第一章 「外商員、奮闘する」から第四章「外商員、感動する」の全4章で、プロローグ・エピローグんのある構成となっています。
また、著者の高殿円さんの作品には、テレビドラマ化され話題となった『トッカン 特別国税徴収官』等があります。
あらすじ
まず、こちらが小学館文庫、裏表紙のあらすじです。
神戸の老舗、富久丸百貨店芦屋川店で、外商員として働く鮫島静緒(37)。日本一の高級住宅街・芦屋に住む本物のセレブたちに、お買い物をしていただくのが彼女の仕事だ。
ノルマは月1500万円!
パティスリーでの経験と人脈を活かして奔走する静緒だったが、外商部はいずれも一筋縄ではいかないお客様ばかり。
その上、本物のセレブ出身男子が同僚として配属されてきてーー。
小学館文庫あらすじより
主人公、鮫島静緒について
主人公は、富久丸百貨店唯一の女性外商員の鮫島静緒。小さい頃から百貨店へは憧れを抱いていました。
郊外の小さなパティスリーで働いていましたが、様々な工夫とアイデアで、その会社を急成長させた経験があります。
その後、富久丸百貨店に入社し、契約社員から正社員となり、ついには百貨店の売上の3、4割を占める外商部に異動することになります。
しかし、当然のことながら、外商員として接する上流階級の方々のに対する言葉の使い方や所作がなっておらず、最初はなかなかうまくいきません。
きっと、彼らもはっきりと言葉にはできないのだ。けれど違和感は感じている。
静緒が外商として仕事をすることに。それをバイヤーに戻るのかもというポジティブな 言葉に置き換えてくれたのは彼らの好意だった。
ということは、自分に悪意を持つ人間からすると、それは外商にふさわしくないということなのだ。
「上流階級 富久丸百貨店外商部」 p91
さらに、男性社会の外商部で成果を出す静緒に対する妬みや女性社員からの嫉妬、わがまま放題のお客様と次から次へと困難が待ち受けます。がんばれ!
セレブな同僚、桝谷について
そんな静緒に対して、名家で育ち、生まれながらにして上流階級としての嗜みや人脈があるのが、同僚の桝屋。
三十歳を目前にして、もうカフスを付けているのが目に付いた。一目見ただけで私とはお育ちが違うと脳が認識している。
「上流階級 富久丸百貨店外商部」 p66
桝谷は、その人脈を活用し、悠々と与えられたノルマを達成します。
はじめはそんな桝谷に対し、静緒は敵対心を抱いていましたが、たまたま彼の持つ秘密を知ってしまい…
伝説の外商、羽鳥について
静緒や桝谷の尊敬する、伝説のカリスマ外商の羽鳥。担当顧客は、百貨店にとって超が付くほどのVIPばかりです。
毎日ステッキ代わりに、水牛の持ち手のかさを持ち歩き、まるで英国紳士のような出で立ちをしています。
この羽鳥との出会いが静緒と桝屋、二人の運命を大きく変えていくことになります。
伝説のスーパーカリスマ外商、そんな大仰な肩書きがまったく大仰でないほど、 富久丸百貨店の葉鳥士朗は優れた外商員だった。
彼を知っている店員はだれもかれもが 「あの葉鳥さん」と尊敬の念を込めて呼ぶ
「上流階級 富久丸百貨店外商部」p48(文庫版)
感想
まず、私は組織の観点から考えたことがあります。皆さまはパレートの法則はご存知でしょうか?
パレートの法則とは「全体の数値の8割は、全体を構成する要素のうちの2割の要素が生み出している」という法則です。
例えば、会社の売上でいうならば、全社の売上の8割は、成績上位2割の従業員によってあげられたものであるという法則です(もちろんすべての会社が該当するわけではないですが)。
本書では、外商部による売上が3割程度とありますので、静緒たち外商部は本当にトップクラスの営業であると考えられます。
また、会社として大事なのは、どのお客様に注力するかということです。
もちろん会社からするとお客様に優劣はないかもしれませんが、リソースの限界もあるため、すべてのお客様に全力で取り組むことはできないと思います。
そこで売上が上がる可能性が高い顧客に対し、最も優れた営業である外商部を当てるというのは、真っ当な戦略であるし、よく出来ているなと感じました。
そして、静緒個人としての姿勢からは、お客様は何を欲しがっているのかを常に考え、次に何を売るかを戦略を立てて行動する様が印象的でした。
例えば、「ダイヤ」は一度買ってしまえば、次はなかなか買ってもらえません。
しかし、最初の構成は大変ですが、「イベント」という商品は、その日限りですので、繰り返し買ってもらうことができると静緒は考えます。
このように、営業の方やサービス業でお客様と直接やり取りのある方は、その姿勢から学べることも多いのではないでしょうか。
また、ストーリーとしては、静緒と枡谷のキャラクターが個性的で面白く、最後まで一気に読んでしまいました。そして単純なのですが、私は羽鳥さんに憧れて、改めてスーツの勉強もしました。
と、このように本書に対する感想は尽きませんね。。あまり長くなってしまってもいけないので、今回は以上にさせていただきます!
最後までお読みいただきありがとうございました!
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